鍼灸医案シリーズvol.3 急性の手関節の腫痛

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鍼灸医案シリーズvol.3 急性の手関節の腫痛

2013-07-04

◆主訴;左手首腫痛、不可動手指、手首 2012.08

2日前の朝に起きた時から痛み。不可動。腫れも顕著
痛み発症時は黒部(長野県)に旅行中のこと(2日前)
起床時から痛みスタート。

旅行中、さらに帰宅後も痛みが増すばかり。

病院に検査するも骨部に異常は無し。
原因不明との診断を受ける。

病院での処置は痛み止めと包帯固定。

しかし、他覚的にも手首周辺の顕著な腫れ、可動域の無さ。

可動域の低さというよりも、
大げさに書くと橈尺骨と手根骨が癒合したような手応え。

『もしかして骨になにかあった?』と疑ってしまうような所見。

何はともあれ脈診・・・。

■脈証
右三陰共に内弦(これは通常の脈)
左全体に洪大にして寸口滑。
水と熱を含んだ脈状。
細かな脈状が洪脈で覆われコーティングされて隠れてしまっている。

■腹証

如故。いつも通り。所見として参考にせず。

急性の症状が主であるゆえ、陳旧の反応は捨証とする。
(その意味では、右脈もほぼターゲット外)

体表観察・・・中府、尺沢、孔最、寒府、中涜に圧痛

■病機

もともと手指の腫痛を起こしやすいという“宿”を持っている。

発症時は黒部立山旅行中とのことから、

“因”は山気の冷え、腰脚部の虚労により、
“宿”により強く症状が現われたと判断。

“本”は虚労+水滞+寒邪

山の気(寒邪)に中られたために、束表され
微発熱、浮腫、骨節疼痛が起こる。
麻黄湯系の証に近いかと。

また旅行中もあって、トイレ回数も減り、
寒冷な気候のため、発汗量も減り
水は通常以上に排出されず、寒邪を迎え入れる準備万端となる。

ちなみに、今朝、自下痢が1回あった。

■治穴

左孔最と尺沢の間(左前尺沢)、左合谷、左申脈、左寒府、左陰陵泉

右三陰交、
右合谷、右太衝(←これらは宿に対する配穴なので主ではない)
(すべて1番鍼・1寸3分)

左の前尺沢、左合谷で洪脈が取れ、左脈の輪郭が現われ、
左関後一部に滑脈にあらわれる。

腰脚から来ていることがうかがえる。

とにかく発表がメイン。
置鍼中、及び背部の治療中に肩背部より微発汗が起こる(イイ感じ)

背部は1行線を主として治療。

⇒2診目

痛み半分に軽減。
手首、手指、可動(それでも通常の50%くらいか…)

だいぶ動くようになったとは言ってくれるが
まだ洗顔の動作など(手首を反らせるため)できない状態。

尿;いつも通りの回数に近づく、
便;微軟

■脈証
右三部共に内弦(宿の脈)に加え、今回は三部共に浮脈。

右の脈証に反して、左脈は関上のみ微しく浮。
左全体の脈状は洪大から軟大に変化する。

■体表観察
腹証、今回も捨。
手の圧痛の変化が顕著。
→前回の治療では、落枕や腰腿点の圧痛が無かったのが
今回では、より強く圧痛が現われるようになった。

■病機
前回までは、外感病が主たる証であったが、それは解除。

しかし、寒湿の邪は今なお強く(湿は宿でもある)、
外感病であった勢いを借りて内発病の様相を呈する。

病位は少陽位。故に骨節部の痛み。

■治穴
右合谷ー太衝
左臨泣ー外関、寒府、内曲池、
加、左豊隆、腕骨

腹部:左天枢、右天枢、左章門

(すべて1番鍼・1寸3分)

≪置鍼≫
背中は主に1.5行線を治療。

■予後
2回目の治療翌日より症状消失。
痛みほぼ消失、手指可動。
通常の主婦業ができるようになったとのこと。

他覚的にも腫れも引いて、骨の癒合感も消失。
我ながら鍼の即効性と効果に安心を感じさせられる症例でした。



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