鍼灸医案シリーズvol.1 【虫垂炎(らしき腹痛)の鍼灸治療】

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鍼灸医案シリーズvol.1 【虫垂炎(らしき腹痛)の鍼灸治療】

2013-06-20

こんにちは、和魂漢才鍼灸の足立繁久です。

もうかれこれ10年ほど前のこと。

虫垂炎らしい症状の治療にあたりました。
虫垂炎らしいというのは、病院で検査を受けていないから。

しかし、患者さんの訴えは、心窩部の不快感から始まり、
Lantzの圧痛点、McBerneyの圧痛点などに顕著な圧痛が見られ
教科書通りの所見が得られました。

脈証:特記事項無し。(その頃は気口九道脈診を未修得)
後々ふり返ると、脈状は洪大脈のようであったか…というくらい。
右関尺に実脈系の病脈が強くみられた・・・との記憶があります。

腹証:胃土、右天枢、右腎(圧痛)

治穴:虫垂炎に著効がある闌尾穴を試すも無効…。

他にもいろいろな治穴に刺鍼するも、まったく効果は得られず
痛みは増すばかり…。

しかも、2日目には反跳痛が見られ、
虫垂炎から腹膜炎に波及しかかっていることが予測できました

当時の私が思いつく限りの治療をしましたが
どれもこれも無効。

万事休す…ここは救急に行くしかないか…と思った矢先。

ふと思い立ち、右章門に銀鍼(圓鍼)を当てたところ。

『気持ちいい。』


『なんか悪いものがスッと取れていくような気がする…』とのこと。

そこで、右章門に打ち鍼・勝ちひきの針を一心不乱。

驚くほどの著効が見られました。

反跳痛は軽減、消失。

姿勢が“く”の字になるほどの激しい腹痛も軽減、翌日には消失。

臓会穴、章門のチカラ恐るべし…。

と実感した治療例でした。

ちなみにこの患者さんは私の妻。

後日『鍼灸真髄』を読むと、
沢田健先生も同様の症状を章門穴で治療しておられた。

また、虫垂炎を『傷寒雑病論』でみると・・・
腸癰という病名に近似すると考えます。

腸癰に対する方剤は大黄牡丹皮湯。
下して、駆瘀血も行う。

章門が効くわけだと、後日納得したのでした。

◆さらに後日談・・・9年後。

同様の所見を訴えるゲストが来院。

■主訴:腹痛

■所見:Lantz点、McBurney点の圧痛。反跳痛あり。
圧痛点情報だけでなく、なんとなく9年前を思い出す腹診の雰囲気。

この方、元からして痛みにめっぽう強いのだが、
今回は痛みが相当強く、車のアクセル踏むのにも困難だったとのこと。
(それでも治療に来るか…いや、来てくれてありがとう)

■脈証
右寸浮に滑緩大脈、
右尺沈に滑緩大脈。
左関上に渋。
両寸口、外に開く。

■腹証
左右腎(沈実)、右肝相火(2、3条の硬実あり)
右章門、右天枢、右期門、帯脈に実。

■治穴
右曲池、上巨虚、左三陰交
右章門、天枢、帯脈

痛み相当きつそう。
押し手の圧ですら顔をしかめる程。

■予後
治療後、虫垂炎や腹膜炎の所見が見られることを説明。念のため、病院の検査を勧める。

1週間後、問診確認では痛みも大方治まる。
病院には行ったとのこと。
腹膜に炎症の跡が見られるも、炎症の出どころは不明。


『子宮筋腫でしょう。』


『その筋腫の炎症が腹膜に波及したのでしょう。』

との診断を受ける。
(しかし、婦人科で再受診するも結局、子宮筋腫は見つからなかった…)
お薬を処方される。

⇒2診目
1診後、一度痛み再発する(すぐに治まったとのこと)。

■脈証
右脈:寸浮滑大、尺沈滑大は変わらず。
両寸口外に開く。

■腹証
右腎(沈実)、右肝相火(実)
右章門、右帯脈、右期門

反跳痛は消失、圧痛点に反応は少し残り。

■治穴は1診目と同様。

⇒3診目
痛みは起こっていないとのこと

■脈証
右寸口に滑残り。
両寸口外に開く。

■腹証
右肝相火(実)、胃土上部(実)

反跳痛、圧痛点の反応、共に消失。

■治穴は同様。

結局のところ、虫垂炎(腸癰)であったのか?
本当に子宮筋腫があったのか?(筋腫は見つからなかったけど)

その筋腫による腹膜への炎症波及だったのか?
今となってはわからない(どっちでもいいけど)

少なくとも、腹部の炎症(腹膜炎のレベル)までは
鍼灸治療の射程範囲だと実感できる症例。

もちろん、通院くださる患者さんに対して、病院での精査はしっかりと勧めた上での話。



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